白松研D1の橋本です。この度、大阪で開催された2025年度人工知能学会全国大会(JSAI2025)に白松研から8名が参加しましたので、参加報告を行ないます。全8名の参加報告ですので少し長いですが、お付き合いください。
「AIとデモクラシーにおけるパネルディスカッションシステム」
「LLMとマルチエージェントが拓く未来の民主主義」をテーマに、8名のパネリストが登壇し、パネルディスカッションを行う。討議では、パネル討議支援システムを活用して、リアルタイムの聴衆意見を反映しながら議論を進める。
パネルディスカッションの内容自体、大変参考になった。その中で、開発したパネルディスカッション支援システムがある程度動いたので、安心している。今後はこの内容で学会に出したい。
「マイクアレイ処理を用いた時空間データ分析による都市公園のにぎわい可視化」
近年、多くの都市での街づくりにおいて人々が集まり交流するための空間づくりが重要視されており、中でも都市公園では、人々のにぎわいを創出すべく日々さまざまなイベントが行われている。これらの施策が実際ににぎわいを生み出したのかを検証するためには、にぎわいを定量的に評価する必要がある。本研究では、複数のマイクアレイで収録した音声の発生タイミングや到来方向を組み合わせて、空間内のにぎわいを定量的かつ客観的に評価する手法を提案する。約3か月にわたり都市公園内の広場で収録した音声を用いて、イベントの有無や天候に着目してにぎわいの変動を分析した。その結果、イベント時には通常時と比較してにぎわいが大幅に増加し、公園利用の活性化に寄与していることが明らかとなった。さらに、晴天時や気温が快適な日の昼間にはにぎわいが増加する傾向が見られ、気候条件が人々の外出意欲を高める要因となることが示唆された。
今まで参加した学会と違い、企業の方が多く聞いていたので緊張した。発表後に似たような研究を行っている企業から声をかけていただいたのは嬉しかった。また、質問3にて、なぜ音を使用したかは自分が関わっている範疇の外にあったため回答に困ったが、何とか発言で来たのは良かった。やはり、なぜが問われる質問は一から自分が作っていないと回答しづらいと感じたため、今回ハイラブルと共同で行った発表で新たな経験が出来た気がする。
「LLMを活用した目標達成支援のための段階的聴取型情報推薦手法」
情報過多の時代において,ユーザが必要な情報を迅速かつ適切に得るための情報推薦技術が注目されている.従来の会話型情報検索では,ユーザの目標が曖昧な場合に,目標達成支援のために適切な情報推薦を行うことが困難であった.本研究の目的は,ユーザの目標を段階的な対話を通じて明確化し,各段階に適した情報を提供することで,目標達成を支援する情報推薦の手法を構築することである.これにより,ユーザが曖昧な目標を持っている場合でも,段階的な聞き取りを通じて明確化し,目標達成に適した情報を迅速に提供することを目指す.本研究は,ユーザの目標に適した情報推薦の可能性を示し,今後の研究でその有効性を検証する予定である.
学会中盤から頭痛,腹痛等の体調不良でなかなかきつかった.何回も発表をしてきたため今までと比べてあまり緊張はなかったが,一番人数が多かったことは少し驚いた.人の発表を聞く中で,自分のスライドは文字が多く,図が少ないため,わかりにくかったなと思った.また,聴衆の反応のを見ながら補足したりする余裕はなかったので,次回はそれができるように頑張りたい.
「地域の重層的支援体制構築のためのLLMを用いた情報抽出システムの開発」
生活困窮者の支援のために、各地の社会福祉協議会などが、地域での重層的支援が可能な支援者間ネットワークを構築しようとしている。そのためには、協力的な組織や人を効率的に探索し、地域を巻き込んだ連携体制を作ることが必要である。しかし、地域内の多様な主体、特に社協が把握できていない新しい団体などを体系的に収集・活用する仕組みはまだ十分に整備されていない。本研究では、名古屋市中区を対象に、地域の多様な支援団体等の情報を抽出するための地域資源採掘システムを提案する。本システムは、LLMを活用して検索語を生成し、検索したWebサイトから組織や個人の情報を抽出する。また、抽出された情報の適切性を「関連性」「参加意欲度」「新規性」等の観点から評価する機構を設計した。これにより、地域の多様な主体を巻き込んだ相互扶助ネットワークの構築を可能とし、地域課題の解決と持続可能な発展に寄与する。
仮説→実験→考察の基本的な流れをこれまで正しく行ってきていなかったため、行った実験と結果に対する受け答え、考えがまとまっていなかった。たまたま、自分の発表のセッションの座長が昭和区社協でボランティアをしている先生だったので、今後連絡を取り合い、研究をしていくことが出来そうで良かった。
「深掘り質問促進のためのLLM を活用した動的プロンプト制御型顧客インタビュートレーニングシステム」
In recent years, accurately identifying customers'latent needs has become increasingly important. We propose a customer interview training system that utilizes a Large Language Models (LLM) as the interviewee. Our system dynamically updates prompts based on the progress of the conversation, ensuring that users can only extract latent needs if they ask appropriate follow-up questions. Experimental results demonstrated that, while the number of questions asked by participants increased by only 35% with the baseline method, it increased by an average of 148% with the proposed method. Furthermore, the number of questions required to elicit a single piece of information from the system was up to four times higher in the proposed method than in the baseline, indicating its effectiveness in promoting in-depth questioning.
思ったより人が多く緊張してしまった。質問がそりゃ聞かれるよなと言うことで、ここをしっかり潰さないと国際学会は厳しいなと思った。
「非暴力コミュニケーションにより感情的対立を緩和する共感型LLM対話システム」
議論において各個人の主張が対立した際,感情的な衝突に発展する場合がある.これにより,議論の停滞を招くことが考えられる.そこでLLMを活用し,非暴力コミュニケーションに基づいた対話を行うことで,ユーザ間の共感を促進し,感情的対立を低減するシステムを試作した.観察,感情,ニーズ,要求の4つの要素に基づいた対話を設計することで,より共感促進の効果が高まるという仮説を検証.特定の対立シナリオにおける感情的な衝突の発生状況と議論の進行度合いをシミュレーションし,その結果から,議論前に行う対話とNVCの感情的要素の有無が与える,その後の議論への影響について考察する.
想像したよりも人が多かった。改めていろんな人から質問もったり、話ができるのはいい経験だなと思った。
「アイデア発想型議論のためのLLMを用いた発想支援エージェントの開発と評価」
アイデア発想が求められる場面は多いが、アイデアを創出することは容易ではない。したがって、課題に対して充分な検討が行えるように支援することが必要だ。本研究は、グループワークによるアイデア発想におけるアイデアの質・量を高めることを目指し、ユーザのアイデア出しを支援するエージェントを試作した。このエージェントは、テキストベースで議論の進行状態を推定し、適切な発想支援法を利用した助言を提供することでユーザを支援する。実験では、ユーザへの助言に発想支援法を利用することが有効である可能性が示唆された。
めちゃくちゃ緊張した。ちゃんと台本を用意して練習してきたのにスライドとの往復をしたら飛んだし早口になったような気がするのでまだ練習が足りないと感じた(あと発表ツールの時間リセットし忘れて時間の把握ができなかった)。質問自体にはスムーズに答えられたと思っているが、考慮していない要素とかも普通にあったので今後はそういうところも考えていきたい。
「会議中の発話量に基づく人的資本可視化手法の提案」
近年,多くの企業が人材の重要性を認識して人的資本に投資し,イノベーション創発を促すための組織活性化や組織内コミュニケーションの活性化を目指している.しかし,従来の定量化は男女賃金格差や管理職の女性比率など計測しやすい指標が中心で,人的資本に本質的な社内の会話に関する観点がなかった.そこで本研究では日常的に行われる会議に着目し,会議中の発話行動を用いた人的資本の可視化手法を提案する.具体的には,筆者らが開発している雑音環境下における会話可視化技術で会話を定量化し,会議における性別や役職等の属性ごとの発話量の差,同席の有無による発話量の変化,連続値を持つ属性と発話量の相関を定量化する.提案手法の有効性を検証するために,ある中小企業における週次ミーティングを対象に,性別・所属部署ごとに発話量を分析した.
今回は人的資本などの経済的な分野ということで,初の金融系のオーガナイズセッションに参加しました.しかも,初日の最初のセッションの最初の発表ということで学会の温度感が分からないままの発表だったので,いつもとは違う感覚でした.しかし,私たちの手法について,特に企業系の研究者の方たちに興味を持ってもらい,非常に参考になる質問・意見を頂くことができました.