人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会(SLUD)第100回研究会にて橋本が発表・櫻井が参加しました!

はじめに

名古屋工業大学工学専攻創造工学プログラム1年白松研究室所属の橋本です。
この度、言語・音声理解と対話処理研究会(SLUD)にて発表しましたので、参加報告を行ないます。また櫻井は共著者として参加しました。SIG-SLUDでは2回目の発表でした。SIG-SLUDは、文理融合的に対話処理に関する研究を行う研究会です。SIG-SLUDのホームページはこちら。https://jsai-slud.github.io/sig-slud/100th-sig.html

橋本・発表内容

私が発表したタイトルは「看護師のキャリア面談のためのLLMを用いたスロット生成型対話システム」です。アブストラクトを短くまとめます。
「看護管理者が行うキャリア面談の効率化と質の向上を目指し,面談前の準備段階としてスタッフのキャリアに関する情報収集を目的とした対話システムの試作を行った.看護管理者は本システムを通じて看護師の悩みや期待を事前に把握し,より効率化された面談を行うことが可能になる.本システムは,対話しながらスロットを埋めていき,その内容から対話の最後にレポートを作成する.そこで大規模言語モデルを用いてシステムが自律的に新しいスロットを生成し追加することで,柔軟な対話を行う方法を提案する.」

質疑応答

発表後いくつか質問を頂いたので、その内容と回答を示します。
脱線していくとどんどん無駄なスロットを作っていくのでは?:その可能性はあるが、テストの際に趣味の話をしてもキャリアの話題に帰って来た。それはプロンプトに「キャリア開発を支援する」という文言を入れているからだと考えている。(追記:ただし、キャリア以外にもユーザが抱えている問題の原因があることがあるので、上手くコントロールしたい。
スロット生成をどう定量評価するのか?:現在スロット生成を定量評価する手法は見つかっていない。そのため、最終的に生成されるレポートの良し悪しで評価するしかない(追記:スロット生成のための手法を定式化することで、それに則したスロット生成ができているかで評価することはできる。しかし、それでもユーザのクリティカルな課題を探すことができたかは測れないので今後の課題。)
ハルシネーションが出たらどうするつもりか?:質問生成やスロット生成におけるハルシネーションについては問題視していないが、レポート生成におけるハルシネーションを問題視している。レポートに関してはユーザ自身が最後にチェックするため起きたとしても問題は少ない。しかし、例えば、看護管理者への指南が不適切であったりする場合システム全体の評価に関わるので、その辺りは今後の課題として考えている。

橋本の興味深かった研究

興味深かった発表は滋賀県立大学 高梨克也先生の「スーパーバイザーによる仮説形成的聞き取りの構造:古典的AIの遺産を踏まえつつ」です。 この「仮説形成的聞き取り」というのが、私の今回の発表におけるスロット生成と似ていると感じたからです。スロット生成は、ユーザの発話から新しいスロットを生成することで、ユーザの課題を探します。一方で、仮説形成的聞き取りは、ユーザの発話から新しい仮説を考えることで、ユーザの意図や隠された事実を推定する方法です。仮説形成的推論をアブダクションと呼ぶらしく、この推論手法をLLMでい再現することを現在目指しています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaislud/100/0/100_148/_article/-char/ja

櫻井の興味深かった研究

興味深かった発表は岡山県立大学 寺尾 光一郎さんの「コレクティブLLMsのミクロマクロリンクの多様性」です。 これはビッグファイブパーソナリティ特性が、意見分布、言語分布、情報の拡散、話題の分布などの集団レベルのダイナミクスにどのように影響を与えるかを探求した研究です。誠実性を低く設定したエージェントは、噂話を流すときに嘘の情報を混ぜることがあるという話が特に興味深かったです。また、ポスター発表であったため、わからないところを詳しく聞けて深く理解できたのがよかったと思いました。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaislud/100/0/100_69/_article/-char/ja