IJCAI in マカオ で発表しました!

はじめに

名古屋工業大学大学院創造工学プログラム1年白松研究室所属の橋本です。
この度、マカオで開催されたIJCAIの併設ワークショップのDemocrAIに参加しましたので、参加報告を行ないます。 今までに国内の学会は複数回参加したことがありましたが、国際学会は初めての参加で、分からないことや初めての経験などもあったのでそれらもまとめようと思います。
また、今回のワークショップで”Best Student Paper Award”を受賞することが出来ました。白松教授、研究の支援していただいた方々、実験に参加して頂いた白松研の方々、関係者の方々にここでお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

発表内容

私がワークショップにて発表したタイトル(日本語訳)は「民主的な研究室を目指して:研究室の学生の自主性を向上させるための大規模言語モデルベースの対話エージェント」です。アブストラクトを短くまとめます。
「近年はトップダウンからフラットかつ民主的な組織へ変化していこうとする動向がある。しかし、様々な組織では、組織構成員の自主性が低く、民主的な組織運営を行うことが難しい。また、我々の研究室も、研究室のメンバーの増加に伴い、フラットかつ民主的な組織へ変化しようと試みた。しかし、本研究室の研究室メンバーの自主性が低く、民主的な組織への変化が上手く行かなかった。そこで、本研究では一般に自己効力感が高い人は高い自主性を持っていることに着目し、組織が抱える課題を解決するためのコーチングエージェントを開発し、コーチング前後でユーザの自己効力感を測定した。結果、知識、スキル、自信のすべての項目で自己効力感が向上した。また、実験結果からユーザの自己効力感、だけでなく自己理解、メタ認知も向上することが見受けられた。」
大会HPはこちら。https://sites.google.com/kyoto-u.ac.jp/democrai2023/

質疑応答

質疑応答では、3つほど質問がありました。最初の一つだけ答えることができました。
質問「なぜ自主性を促進させるためのコーチングにも関わらず、自己効力感を測定したのか、そしてそれの妥当性について」
私の回答「一般的に自主性の高い人物というのは自己効力が高いということを知られているからです。 かつ、自己効力感が高い人は、(実現困難な)課題に対して(高い自信、ポジティブな考えによって)参加する傾向がある。 それが自主性を測定する代わりに自己効力感を測定した理由です。」 ()内の言葉は、報告書執筆時に書き加えています。
実際、この回答で「自己効力感を測定した理由」を納得して貰うことは難しかったです。 自主性と自己効力感の関係性についてもっと深く説明すべきだったと思います。以下は、翌日に考えた回答です。
「Thank you for your question.
一般的に自主性の高い人物というのは、~~~~~参加する傾向がある。
加えて、信頼できる十分成熟した人物向けの自主性を直接的に図る評価尺度がありません。 しかし、信頼できる十分成熟した人物向けの自己効力感を測る評価尺度は存在します。なので自主性と大きな関係がある自己効力感を測定しました。 また、自己効力感が高いということは、「組織の問題の解決のために行動を起こす」ということを促進できると考えます。 なので、そもそも自己効力感が高いということは自主性が高いと言い換えることができるとも考えます。 これらが自主性を測定する代わりに自己効力感を測定した理由です。
(辞書を使わずに追加分の英文を書きます:Additionally, we don't have the reliable questioner that measure the autonomy of mutual person directly. But we have the reliable questioner that measure the self-efficacy of mutual person. And it is known that autonomy is closely related to self-efficacy. With high self-efficacy, it promotes the user do new action for the problem of organization. So, we think that having highly self-efficacy means having highly autonomy. These are the reason of that we measured self-efficacy to measure autonomy.)」
またこの後も質問、ディスカッションが続いたのですが、途中で理解することができなくなったため、白松先生に代わりに答えて頂きました。 自分の発表を録音していたので、日本に帰れば留学生の力なども借りながら、質問、ディスカッション内容を理解したいと思います。

課題

今回の質疑応答を通して、自分の課題を見つけたので、共有します。

英語力

せっかくのワークショップというディスカッションが自由な場ながら、英語力が原因でうまく研究を(質疑応答の時間に)説明することが出来ませんでした。
もし、次に国際学会に行く人にアドバイスをするならば、自分が論文で使う英単語は最低限理解し、自分よりも前に発表した人達がよく使う英単語を調べることだと思います。(ただし、恐らくこれはワークショップに限ると思います。メインカンファレンスでは、合計で1人10分ほどかつ、質問も1つ、2つでした。)
また、日頃から英語の論文(自分に似た研究、参考文献)を読むことで、自分野で学術的に使われる単語が理解できると思います。(例:preference) 僕自身は、スピーキング自体はなんとかなりましたが(言いたいことが伝わったか不安ではありますが)、やはりリスニングが非常に難しかったです。
ただ、質問にたどり着くまでに、質問者が自分の考えなどを説明する過程があるため、この間に何を質問しようとしているかをある程度推測しておくとよいと思います。 もし、30%くらい理解したならば ” I don’t understand your question.” といえばもう一度繰り返すもしくは、簡略化して質問してくれます。 今回の学会でよく見る光景でした。(ネイティブに限らず)

プレゼン能力

今回の国際学会での発表は初めての経験だったこともあり、入念に準備をし、発表プレゼンテーションのノートにすべての発言を書きました。
しかし、他のプレゼンター、特に一部のプレゼンター、は1枚のスライドで2~3分消費しているような人もいました。 もちろん、学生でここまでやるのは難しいとは思いますが、英語の発表、日本語の発表に限らずただ単にノートを読むのではなく、顔を上げて聴講者の顔を見て、理解が進んでいそうでなかったら深く説明するなどができれば素晴らしいと思います。 僕自身もプレゼンテーション中に臨機応変に対応できるくらい余裕を持っていれば、さらに伝わりやすい発表になったと思いますし、日本語での発表はそうしたいと思います。

ワークショップの感想

質疑応答の時間では余裕で予定の時間を超え、発表者に対する質問以外にも、聴講者同士でディスカッションすることがありました。 それは日本の学会では見られないようなことでした。 それは国際学会の特色というよりも、もしくは日本の学会が世界から見ると特殊なのかもしれないと思いました。

コミュニケーション

同じくワークショップに参加していたアメリカで活躍されている日本人研究者の方と出会いました。
ワークショップ後、食事に行くことになり、火鍋屋さんで研究の話を聞くことができ、非常に貴重なお話を聞くことができました。 よく研究者はコミュニケーション能力が必要というのは聞きますが、日本人に限っては、学会に日本人が少なく、ほとんどの人が英語やコミュニケーションの問題を抱えているので積極的に話しかけるとよいと思います。 ここで躊躇すると、セッション間のコーヒーブレイクの時間がとてつもなく暇です。

全体の感想

初めての国際学会でまだ学生なので、完璧にできるということはありえません。
しかし、英語などは事前準備可能な部分だったので、もっと英語の勉強をしておけばと思いました。 また、質疑の内1つは自分で答えることができたので、少なくとも以前の自分よりも一歩進んだと考えれば良い経験だったと思います。 また偶然ですが、賞も頂くことができ、研究のモチベーションが向上したので、さらに良い研究ができるように頑張ります。

余談

色々発表を聞いたり、コミュニケーションを取ったりして思ったのは、なぜ日本人、アジア人の英語が理解しやすく、欧米の人の英語が理解しにくいかです。
当たり前と思われる人もいると思いますが、文章の複雑さが明確に関わっているような気がします(スピード、文章の区切りが分かりにくいことも考えられます)。 僕自身、日本での想定質疑応答は単語の問題以外はほとんど問題なかったですが、学会では口語的な文章構造が複雑すぎて、理解できませんでした。
なので、簡単な質問を複雑化(ある意味口語化、単語単位ではなく構造として)して意味は同じでも理解しづらい質問を生成するシステムがあれば、ゼミなどでより本格的、実践的な質疑応答を行うことができる可能性を感じました。